倉庫アウトソーシングとは?
メリットやデメリット、業者選びの注意点を解説!

コロナ禍に伴うEC事業の拡大や、消費者ニーズの多様化を背景として倉庫業務の内容な年々煩雑化しています。

そのため、倉庫業務を自社で行うのがむずかしくなりアウトソーシングを検討している方も多いのではないでしょうか。

この記事では、倉庫アウトソーシングの詳細と、そのメリットやデメリット、業者を選定する際のポイントなどを詳しく解説します。

倉庫アウトソーシングに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

倉庫アウトソーシングとは?

倉庫アウトソーシングとは、倉庫業務を自社で行わず専門業者に委託することです。受発注や配送業務などと合わせて「物流アウトソーシング」と一括りにされる場合もありますが、倉庫業務だけをアウトソーシングすることも可能です。

前述の通り、EC市場の拡大や消費者ニーズの多様化を背景に倉庫業務の内容は年々煩雑化しているため、ノウハウを持った専門業者にアウトソーシングすることが増えています。

倉庫アウトソーシングで委託できる作業範囲

倉庫アウトソーシングを利用すると、主に以下の業務内容を委託できます。

 

入荷、検品、保管、ピッキング、流通加工、梱包、出荷、返品、棚卸

 

特に、扱う商品によっては個々の荷姿がバラバラだったり、細かいロット管理が必要だったりと作業が煩雑になるケースがあります。その場合、自社で倉庫管理を内製化すると負担が大きくなるため、専門業者にアウトソーシングすることで多くのメリットを得られるでしょう。

具体的なメリットの詳細については、以下の見出しで確認していきます。

倉庫業務をアウトソーシングするメリット

倉庫業務をアウトソーシングして得られるメリットは多岐にわたりますが、ここでは特に代表的な4つのメリットを厳選しました。

1つずつ詳しく確認していきましょう。

メリット①:自社の人材リソースの確保

倉庫業務をアウトソーシングする1つ目のメリットは、自社の人材リソースの確保ができることです。

近年では各企業で人材不足が深刻化しており、帝国データバンクの調査によると2023年1月時点で正社員では51.7%、非正社員では31.0%の企業が人材不足を抱えているとされています。

ノンコア業務である物流を専門業者にアウトソーシングすることで、人材リソースをより有効活用できるようになります。その結果、自社リソースに空きが生まれ、優秀な人材がコア業務である商品開発・マーケティングなどの業務にあたることができます。

 

参考:人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)|帝国データバンク

メリット②:ヒューマンエラーの削減

2つ目のメリットは、人を原因としたミスである「ヒューマンエラー」が削減されることです。

倉庫業務で発生しがちなヒューマンエラーの例として、「品番の見間違いによる誤ピック」「商品数量の数え間違い」などが挙げられます。このとき、熟練度の高いベテラン従業員がいるアウトソーシング業者に依頼するのも1つの手です。しかし、そういったケースでは、そのスタッフがケガや病気などで退職した場合、作業が属人化しているため、物流品質が悪化するリスクがあります。そのため、倉庫管理をアウトソーシングするのであれば、倉庫管理マニュアルを整備し物流システムによってデジタル管理を徹底している業者に依頼することがおすすめです。そうすれば、作業員の熟練度や注意力に依存することなく、高品質で再現性が極めて高い倉庫管理を実現することが可能です。

メリット③:入出荷キャパの拡大

3つ目のメリットは倉庫の生産性を高められ、1日に対応できる入出荷数を拡大できることです。

せっかく商品が売れているのに入荷や出荷の作業に時間がかかってしまえば、売り逃しが発生してしまいます。倉庫アウトソーシングで入出荷キャパが拡大すれば機動的な販売が実現します。

生産性向上の背景には、商品の形状や取り扱い数量を勘案した最適なロケーション管理に加え、WMS(倉庫管理システム)やマテハン機器などを活用した倉庫の自動化も関係しています。

倉庫業務を自動化できれば、ヒューマンエラーの抑止や作業効率の向上などが期待できます。もちろん、自社で倉庫の入出荷キャパを上げることも不可能ではありませんが、ノウハウが無くリソースにも限りがある状態では金銭的・時間的コストがかかります。しかし、アウトソーシングであれば、少なくとも時間的コストは確実にカットできるので得るものは大きいといえるでしょう。

メリット④:コストの削減

4つ目のメリットは、さまざまなコストを削減できることです。

たとえば、自社で倉庫を保有・運営するとなると、通年で家賃などの諸経費が発生し、倉庫費用が固定費としてかかります。その一方、アウトソーシングすれば委託業者が使う倉庫の一部を間借りする形になるので、使った場所だけの保管コストで済みます。

また、最適なロケーション管理や保管什器を活用することにより保管効率を高め、コストを削減することも可能です。さらに、アプリ開発のエンジニアやデータベース構築のエンジニアなど、専門的な人材を雇うにも高いコストがかかりますが、アウトソーシングを利用すれば、必要なときに必要な工数だけで活用でき、大幅なコスト削減に繋がります。

その他にも採用コストや教育コストも不要になります。もちろん、倉庫アウトソーシングに伴う追加コストも発生しますが、それによって上記コストが軽減できれば全体のコストを削減することは十分可能です。

 

倉庫業務アウトソーシングで考えられるデメリットとは?

倉庫アウトソーシングは多くのメリットがありますが、注意しなければいくつかのデメリットに繋がる可能性もあります。

それでは、倉庫アウトソーシングで考えられる3つのデメリットについて、さらに詳しく確認していきましょう。

デメリット①:自社にノウハウが蓄積されない

倉庫業務をアウトソーシングする1つ目のデメリットとして、自社にノウハウが蓄積されない点が挙げられます。

したがって、自社で将来的に倉庫運営を内製化することを検討している場合は、アウトソーシングすると倉庫管理のノウハウが得られません。倉庫業務の詳細がブラックボックス化しないよう、業務マニュアルを明文化し、月次でアウトソーシング企業を交えてミーティングを実施するなどして、現場の作業実態を可視化することが重要です。

また、委託業者と共通の指標(保管効率、棚卸差異率、返品率、誤出荷率、一人当たりのピッキング数など)を定めて数値を共有し、定期的な監査の実施や倉庫管理システムでの情報共有(その日ごとの入出荷報告やSKUレベルでの在庫報告)も徹底することで、物流品質とコストの妥当性も検証できます。

デメリット②:自社に合った業者選びが難しい

一括りに倉庫をアウトソーシングするといっても、扱う商品(コスメ・医療機器・ペット用具・金属部品・輸入食料品・書籍など)によって倉庫管理の方法は異なります。

また、メーカー・問屋・小売というポジショニングによっても変わってきます。化粧品であれば、「Qoo10メガ割時にも出荷制限なく対応できるか」「細かいロット管理(ロットの跨りやロット逆転の防止など)はシステム制御で可能か」といったことは事前に倉庫業者に確認しておくべきでしょう。会社によって対応可能なサービスやその品質には大きな違いがありますので、しっかりと情報を精査し自社に合った業者を選ぶことが大切です。

また、倉庫で扱う商品によっては特別な許可が必要なこともあります。たとえば、倉庫で化粧品を取り扱うためには「化粧品製造業許可」が、医薬部外品を扱うためには「医薬部外品製造業許可」が必要です。評判のよい業者だからといってこれらの許可すべてを有しているとは限りません。
倉庫業者としての総合的な評判だけで選ぶと失敗しやすいので、自社で扱う商品の特性や経営方針を踏まえて複数業者を見比べながら選定することをおすすめします。

デメリット③:柔軟な対応ができない可能性がある

倉庫アウトソーシング業者は、基本的に複数企業のアイテムを同時に扱っています。そのため、自社に合わせた柔軟な対応ができない可能性があるので注意が必要です。たとえば、商品出荷時に「ギフトラッピング」や「同梱物の封入」などの特別な流通加工をしたい場合、事前に対応可能か業者に問い合わせておきましょう。特にギフトラッピングは“できる・できない”の2択ではなく、「複数のパターンに対応できるか」「ラッピングの袋だけを入れることができるか」「一部商品だけのラッピング対応は可能か」など、細かい点まで確認することが望ましいでしょう。また、その他にも商材によっては、安全性の問題から温度管理や湿度管理が必要であったり、厳密な先入れ先出しが必要なケースもあります。将来的な可能性まで踏まえたうえで確認しておくことが望ましいと言えます。

倉庫アウトソーシング業者を選ぶ際のポイント

倉庫アウトソーシングで満足いく結果を残すためには業者選びが非常に重要です。ここでは、業者を選ぶ際に注意したい4つのポイントを確認していきます。
上記で挙げたメリット・デメリットを踏まえたうえで、これらのポイントに基づいて業者選びを行い、より効果的な倉庫アウトソーシングを実現しましょう。

ポイント①:自社の商品特性と似ている商材の実績が豊富か

倉庫アウトソーシングをする場合、実績が豊富かどうかを確認するのがポイントです。
その際に確認したいのが、自社の商品と同様のもの、商品特性の似たものを扱った実績があるかどうかということです。ひとくちに倉庫といっても、扱う商品によって注意点やフローが異なりますので、なるべく自社と近しい業態の実績がある方が好ましいといえるでしょう。

特に、自社で扱う商品が特別な注意を要する(SKUが多くロケーション管理が煩雑、繁閑の差が激しい、賞味期限の手入力が必要)場合は、それらと相性のよい業者かどうかの確認も大切です。その他にも食品を扱うため、常温や低温など一定の温度下での管理が必要なら、空調設備のある倉庫を持つ業者が適切です。化粧品や医薬品、医療機器など、扱うために特別な許可が必要な商品の場合は、正しく許可を所有している業者なのかどうかも、あらかじめ確認しておきましょう。

ポイント②:システム開発に強い業者が運営しているか

倉倉庫アウトソーシングをする場合、運営している業者がシステム開発に強いかどうかも要チェックです。
倉庫運営において、業種や業態によって特有の商習慣があることに加え、販売先ごとに専用伝票や納入ルールが存在します。そのため、最適な倉庫管理は企業ごとに異なり、それぞれにマッチした物流システムを構築できる倉庫管理業者を選ぶことが大切です。
たとえば、「伝票やタグの付け替えなど、百貨店ごとの細かい納品ルールをシステムで管理しているか」「配送エリアや商品特性(荷姿・サイズ・重量など)によって複数の運送便をシステムで制御することは可能か」「GMSや量販店のWEB-EDIを使用した実績が豊富か」などは、ぜひ確認しておきましょう。
また、EC物流倉庫として委託する場合は、各システムとの連携実績の確認も重要です。たとえば、Shopify(ショッピファイ)などのECカートシステムや、ネクストエンジンなどの受注管理システムとの連携実績の有無は必ず確認しておきましょう。それに加え、出荷データの取り込み対応や、マスタ更新漏れなどのイレギュラーにも柔軟に対応できるかどうかも、事前に確認しておくと安心です。

ポイント③:実際に物流倉庫を訪問し、専門性やノウハウを確認する

倉庫業務では、単に商品を保管するだけでなく、入出庫や仕分け、流通加工などのさまざまな物流作業が必要となります。そのため、物流に関して豊富な経験や専門性があり、充分なノウハウを持った業者かどうかを実際に倉庫に足を運んで確認することが大切です。品質に自信がある倉庫会社であれば「実際に稼働している物流倉庫を見学させて欲しい」と依頼すれば必ず見せてくれるでしょう。

注視するべきポイントとして、倉庫内の整理整頓状況に加え、使用されている倉庫管理システムの画面構成や働いているスタッフの服装・挨拶など、いわゆる5Sが行き届いているかがポイントです。それに加え、「ロケーション管理がSKU数や入出荷のオペレーションに合致した効率的な仕組みになっているか」「商品の荷姿や重量を加味したうえで適切な保管什器やマテハン機器が使われているか」なども併せて確認したい項目です。これらを実際に現地に赴いて確認することにより、業者選びで失敗するリスクを最小限に抑えられるでしょう。

ポイント④:ヒアリングをしっかりする物流倉庫を選ぶ

倉庫アウトソーシングを初めて利用する際は、複数の業者に話を聞いたうえで自社の物流課題を解決するためのヒアリングをしっかりしてくれる業者を選びましょう。業種・業態に加え、企業ごとに戦略(販売施策や仕入方法)やオペレーションの方法も異なるため、会社が100社あれば、理想的な倉庫管理も100通りとなります。例えるならば、注文住宅のようなものです。「50坪の広さで5000万の家を作って欲しい」とだけ伝えて、その方にとって理想の住宅が出来上がるでしょうか?それと同様に表面的なヒアリングだけでアウトソーシング先を選択すると、自社の特徴(取扱い商材、入出荷の頻度やボリューム、販売チャネルなど)にマッチした最適な物流提案である可能性は限りなくゼロに近いと言わざるを得ません。また、充分なヒアリング無しで契約すると、後になって“言った言わない”の水掛け論や追加で費用を請求されるなどのトラブルに発展することも多々あります。
細かなヒアリングが出来るということは、物流や商流に関する幅広い知識や経験が蓄積されているからこそなせる業です。すなわち手厚いヒアリングができるということは信頼できる倉庫会社であるともいえます。

ヒアリングや費用の見積もり自体は無料でしてくれる業者が大半なので、十分な検討時間を取って失敗のない倉庫アウトソーシングを実現させましょう。

倉庫アウトソーシングを導入するまでの流れ

ここでは倉庫アウトソーシングを導入するまでの一般的な流れについて話します。

1.サービス会社に問い合わせ
問い合わせする前に自社の扱う商材とマッチするのか確認しておきましょう。

2.ヒアリング・打ち合わせ
委託先と打ち合わせを行う際に物流業務に抱える課題や現状を伝えましょう。

3. 倉庫を見学
倉庫を見学することで、現場ではどう作業してるかを確認できます。

4.見積りをもらう
提案されたプランに対する見積書をしっかり確認しましょう。認識のズレが生じないように注意しよう。

5.サービス会社の比較・決定
複数業者から提案された内容とコスト面を照らし合わせて、サービス会社の比較を行います。

6.サービス会社との契約
契約時は以下の内容について、必ず確認しておきましょう。

・委託業務の内容
・委託料
・有効期間や中途解約
・損害賠償の請求
・秘密保持契約(NDA)

7.物流業務の委託
委託後は、定期的に自社の要望通りに作業が行われているのかをチェックしましょう。

【まとめ】倉庫業務は信頼できる業者にアウトソーシングしましょう

今回は、倉庫アウトソーシングについてのメリットとデメリット、業者選びの際のポイントなどを詳しく確認してきました。
倉庫業務は事業運営において重要な役割を果たしますが、それは商品開発やマーケティングなどのコア業務があって初めて成り立つものです。そのため、事業を効率的に発展させていくためにはノンコア業務である倉庫業務を専門業者にアウトソーシングするのが得策だといえるでしょう。
今回ご紹介したことを参考に、自社に合った業者を選定して倉庫業務を効果的にアウトソーシングしていきましょう。

 

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