物流における保管の基本と費用相場・効率化・管理手法を徹底解説【2025年版】

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倉庫を効率化するポイント ロケーションの改善

物流における「保管」は、単に物を置くだけではなく、品質の維持、需要変動への対応、納期調整など多くの役割があります。
保管方法によっては、物流全体のコストや顧客満足度が大きく変わるため、適切な方法を選択することが重要です。
この記事では、物流に関する保管の基礎知識から費用相場、効率化の最新手法までくわしく解説します。

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物流における「保管」とは

物流における「保管」とは、商品や原材料を一定期間、適切な状態で安全に留めておくだけでなく、すぐに取り出せるように管理することです。

これは単に物を置く作業ではなく、品質の維持、在庫量の最適化、入出庫作業の効率化などで、物流全体の安定運営に直結するため重要です。

適切に保管をすれば、出荷遅延や在庫不足、品質劣化といったトラブルを防ぎ、顧客満足度を高められます。

保管の定義と役割・保存との違い

保管は、物流工程おいて物品を、必要になるまで適切に留めておき、必要なときにすぐに取り出せるようにすることです。

類似した言葉に「保存」がありますが、保存は物品をそのままの状態を保ってとっておくことを意味します。
保存は品質維持そのものに重点を置くのに対し、保管は品質を維持しながらも、出荷や移動のタイミングを管理する役割を含みます。

正しく保管されていれば、商品が必要なときに、必要な状態で顧客の手元に届けることが可能です。

荷役・輸送・在庫管理とは

荷役とは、物品などの移動・積み込み・積み下ろしなどの運搬作業です。
ピッキングや仕分けなどの物品を取り扱う作業も、荷役に含まれます。

輸送とは、物品を拠点間で移動させる行為を指します。

在庫管理は、商品などの在庫を最適な状態かつ切らさないように、供給できるよう管理する作業です。
具体的には、季節によって商品の需要を予測したり、在庫数量や入出庫履歴を数値・データで管理したりする業務があります。

保管方法の種類と特徴

物流現場では、取り扱う商品や業務の性質によって保管方法が異なります。

適切な保管方法を選べば、効率的な入出庫作業や在庫管理が実現し、コスト削減にもつながります。
ここからは、代表的な保管方法と特徴や商品特性に応じた方法について解説します。

固定ロケーションとフリーロケーション

固定ロケーションは、あらかじめ決めた棚やスペースに特定の商品を保管する方法です。
メリットは、在庫の位置が固定されるため、管理がしやすい点があります。

一方のフリーロケーションは、空いている場所に自由に保管する方式です。
商品の場所を固定しないため、空いたスペースを有効に活用できます。
ただし、商品がどこにあるか分かりづらいため、商品管理にはシステムやルールの整備が不可欠です。
くわしくは、後述の「ロケーション管理と効率化」で解説します。

商品特性に応じた保管(温度管理・危険物・高価品など)

食品や医薬品を保管するときは、温度や湿度の管理が重要なため、低音倉庫(定温倉庫)が用いられます。
虫の混入を防ぐ取り組みである、フードディフェンスも近年導入が進んでいます。

また、火災や爆発、中毒などをひきおこす恐れのある危険物は、法令に基づいた専用倉庫での保管が必須です。
専用倉庫には、消防法や毒物及び劇物取締法に基づき、火災や爆発などの事故リスクを抑える設備が設置されています。
他にも、高価品や貴重品は、セキュリティ対策が重要なため、防犯カメラや施錠設備のある倉庫を選びましょう。

物流保管の課題と改善ポイント

物流における保管は、単に荷物を置くだけではなく、限られたスペースを効率的に使い、入出庫の作業効率や在庫精度を高める役割があります。
しかし現場では、活用できていないスペースや、非効率な動線、滞留在庫などの多くの課題が存在します。
これらの問題を放置すると、保管コストの増加や配送遅延などが発生し、顧客満足度の低下に繋がりかねません。
ここからは代表的な課題と、それぞれの改善策について解説します。

スペースロスの見直し

保管効率を下げる代表的な要因として、「スペースロス」があります。
スペースロスには、主に平面ロスや高さロス、山欠けロスがあります。

平面ロスは、倉庫内に物が置かれていないエリアがあり、床に無駄なスペースがある状態です。
高さロスは、天井高を保管に活かせていない状態で、上部に使用できていない空間があります。
山欠けロスは、荷物形状や積み方により、有効に使えていない隙間が発生している状態です。

これらのロスが積み重なると、保管効率が低下します。
改善には、ラックの高さを調整したり、可動式ラックを導入したり、パレットサイズを統一したりするなどの対策が有効です。

動線・レイアウト最適化による作業効率アップ

倉庫内の作業効率は、動線設計とレイアウト次第で大きく変わります。
動線が複雑だったり入出庫ルートが交差していると、移動距離が増えミスも起こりやすくなります。

改善策の一つが、作業フローの可視化です。
現状レイアウトと作業員の動きを記録し、無駄な動きを特定します。
出庫頻度の高い商品が奥にある場合は、出荷口付近に移動させるのが有効です。
また、通路幅・ラック配置の見直しや、通路を一方通行化し、作業動線を改善しましょう。

在庫過多・滞留在庫の発生要因と対策

多すぎる在庫や滞留在庫(死蔵在庫)は、保管スペースを圧迫し資金繰りにも悪影響を与えます。
原因は需要予測の精度不足や、大きすぎる発注ロット、季節商品の売れ残り、取引先キャンセルなどさまざまです。
改善には、販売・出荷データに基づく需要予測精度の向上や、在庫回転率の定期確認、滞留在庫の早期処分(値下げ・アウトレット・廃棄)などがあります。
また、季節商品は外部倉庫に委託し、繁忙期だけ引き取る運用も有効です。

物流における保管料の基本

保管料(保管費用)は、物流コストの中でも固定的かつ長期的に発生するため重要です。
倉庫運営の予算や収益性に直結するため、事前に保管料の計算方法や料金相場、人件費などのコストを正確に把握する必要があります。
物品や業務フローに適した計算方法や、保管単位を選択することが、コスト削減の第一歩となります。

坪建て・容積建てなどの保管単位と選び方

倉庫の保管料の計算には、主に坪(㎡)単位で計算する「坪建て」と、容積(m³)単位で計算する「容積建て」の2つの方式がよく使われます。
坪建ては、保管エリアの延床面積に対し、設定された坪単価を掛けて保管料を計算する方法です。
さらに、坪建て契約には使用した分だけ保管料を計算する「使用坪契約」と、使用する坪数を固定する「固定坪契約」があります。
需要に応じて変動する物品を保管するなら「使用坪契約」、常に一定量の保管する物品があるなら「固定坪契約」が適しているでしょう。

一方の「容積建て」は、保管する容積に対し、単価を決めて保管料を計算する方法です。
保管に使用した延床面積だけでなく、高さも含めて計算するため、コンテナや木材などの大きな荷物に適用されます。
他にも、1パレットあたりの保管料を計算する「パレット建て」や荷物の重量に対して保管料を計算する「重量建て」などがあります。
保管する物品の特徴や量、季節によって変動するかを考慮し、最適な方法を選びましょう。

保管料の相場

倉庫保管料の相場は、立地や設備によって差があります。
都市部では坪単価4,000〜8,000円、郊外では2,000円〜4,000円程度が相場です。
容積単価の場合は、1m³あたり80円〜150円/日程度が目安です。
冷蔵・冷凍設備がある場合は、200〜400円/日程度と相場が値上がりします。
また、近年増加している自動化設備を持つ倉庫は、相場が高くなる場合もあります。
保管する物品と予算を考慮し、最適な倉庫を選択しましょう。

保管料に含まれるコスト

保管料には、設備コストや人件費、光熱費、倉庫の保険料などが含まれます。
設備コストには、棚やパレット・フォークリフトなどの倉庫にある設備費用が含まれます。
人件費は、主に荷役作業員や事務員などです。
棚卸しにかかる作業費用も、人件費に含まれます。

光熱費は、照明・空調・冷蔵・冷凍設備の使用によって発生します。
コストの内訳を把握すれば、削減余地が把握可能です。

保管料削減の工夫

保管料のコスト削減には料金交渉だけでなく、倉庫内オペレーションの見直しが有効です。
動線最適化によって作業時間を短縮し、人件費や光熱費を削減できます。
また、出荷頻度やシーズン性に応じて保管エリアの柔軟な切り替えも有効です。
たとえば、季節によって出荷数が増える物は手前に移動させれば、作業効率が向上します。

ロケーション管理と効率化

ロケーション管理は、倉庫内の在庫を正確かつ効率的に扱うために重要です。
商品の配置や管理方法を最適化すれば、誤出荷やピッキングミスを防ぎ、作業時間やコストの削減が可能になります。
ここからは、ロケーション管理方法と効率化の具体策を紹介します。

ロケーション管理の種類と運用例

「保管方法の種類と特徴」で解説した通り、ロケーション管理には、固定ロケーションとフリーロケーションの2種類があります。
固定ロケーションは、商品ごとに決められた棚やスペースに保管する方式で、場所を覚える必要がなく、誰でもすぐに在庫を探せます。

一方のフリーロケーションは、空きスペースに柔軟に保管できる方式で、倉庫全体のスペース効率を最大化できます。
ただし、どこに何を置いたか分からなくなり、作業効率の悪化に繋がりやすいため、システムで把握し、正確に更新することが不可欠です。

ハイブリッド型として、主要商品は固定ロケーション、それ以外はフリーロケーションを採用する方法もあります。
この方法ならスペースを有効に活用できるため、さらなる保管効率化が可能になります。

誤出荷・ピッキングミスを防ぐ仕組み

倉庫内の人為的なミスによる誤出荷やピッキングミスによって、大きな損失に繋がる可能性があります。
対策としては、棚や保管エリアにラベルや色分けを施し、視覚的に識別する方法が有効です。

また、ピッキングリストに記載する情報を絞るのも一つの手段です。
記載するのは、品番・数量・保管場所(ロケーション)のみにし、商品名などは入れないようにしましょう。
商品名があると、似た商品と混同し、ピッキングミスの原因になります。

他にも、バーコードスキャナーやRFID(ICタグを専用リーダーで読み取る方法)を使ったリアルタイム照合により、取り違いを未然に防げるシステムもあります。

WMSやバーコード・RFIDの活用

WMS(倉庫管理システム)を導入すれば、入庫から出庫までの在庫情報を一元管理し、ロケーション管理の精度を高められます。
WMS(Warehouse Management System)とは、在庫管理などの倉庫に関する業務を効率的に管理するシステムです
WMSとバーコードやRFIDを連携させることで、入出庫時の情報を瞬時に記録でき、在庫の正確性が向上します。
RFID(Radio Frequency Identification)とは、ICタグを専用のリーダーで読み取り、製品を管理できる自動認識技術です。

バーコードと異なり非接触で複数商品の情報を同時に読み取れるため、大量在庫の棚卸やピッキング作業が効率化できます。
また、RFIDは登録した商品情報を変更できるので、バーコードやラベルの貼り替えが不要な点も業務効率化に有効です。

最新テクノロジーによる保管効率化

近年の物流現場では、最新のデジタル技術の導入が急速に進み、保管業務の効率化とコスト削減が同時に実現されています。
人手不足や出荷量の変動に対応するためにも、最新テクノロジーの活用は不可欠です。
ここからは代表的な技術と、導入効果について紹介します。

自動倉庫(AS/RS)で荷役の自動化

自動倉庫(AS/RS:Automated Storage and Retrieval System)とは、商品を自動で保管や取り出しできるシステムです。
ラックやパレットを機械が管理し、必要な商品を自動で出し入れします。
このシステムにより、出庫スピードが大幅に向上できるほか、作業員の人件費を削減できます。
また、棚を高密度に配置できるため、限られたスペースを最大限に活用できます。
初期投資額は大きいですが、人件費削減できピッキングミスも防げるため、中長期的な費用対効果は高いでしょう。

AGV・AMRによる搬送自動化

AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)は、倉庫内での商品やパレットの搬送作業を自動化します。
AGVは、床に貼った磁気テープや二次元コードに沿って走行します。
AMRは、周囲の環境を認識しながら柔軟に移動可能です。

これらを導入すれば、人が行っていた物品の搬送作業や積み下ろしを機械に置き換えられるため、作業員は他の業務に集中できます。
複数台を同時に運用すれば、ピーク時の出荷対応もスムーズになるでしょう。

AIによる在庫最適化と保管スペースシミュレーション

近年では、AIを活用して物流業務を効率化するための活用が進んでいます。
過去の出荷データや需要予測を元に、AIが在庫の最適配置を提案してくれるシステムを導入すれば、保管スペースの無駄を防ぐことができるほか、物品の出し入れがスムーズになり、作業の効率化が可能です。

作業手順やピッキングルートの最適化にも活用できるため、保管効率と出荷スピードの向上が実現します。
また、AIにシミュレーションを依頼すれば、保管スペースのレイアウト変更や新規設備導入の効果を事前に検証できるため便利です。

物流保管のアウトソーシングという選択肢

自社で倉庫運用などの物流業務をするのではなく、専門業者に委託するアウトソーシングなら、設備投資や人件費を抑えつつ効率的な物流体制を構築できます。
特に需要変動が大きい商品や、多様な商品を取り扱う場合に効果を発揮します。
ここからは、アウトソーシングのメリットや注意点を解説します。

自社保管との違いとアウトソーシングのメリット

自社保管は自社施設内で保管を完結できるため、セキュリティや在庫管理方針を自社基準で統一できます。
しかし、施設維持費や人件費が固定化し、稼働率が低い時期も一定のコストが発生します。

一方、物流業務をアウトソーシングすれば、必要な期間に必要な分だけ利用できるため、保管にかかるコスト削減が可能です。
また、物流専門業者のノウハウを活用できるため、作業効率や出荷精度の向上も期待できます。

保管委託先選定のポイント

委託先を選ぶ際は、保管料だけでなく、取り扱い可能な商品の種類を事前に確認する必要があります。
さらに、セキュリティ体制や最新テクノロジーとの連携なども確認するのがおすすめです。また、繁忙期の増員対応
や、返品・検品といった付帯業務が可能かも確認すると良いでしょう。
実際に現場を見学したり、他社と比較したりして、委託先のオペレーション力や品質管理体制の見極めが必要です。

アウトソーシングのリスクと対策

物流業務のアウトソーシングには、委託先への依存度が高まることで発生するリスクもあります。
たとえば、委託先の業務遅延や誤配送があった場合、自社の顧客満足度に影響します。
クレームが発生した場合の対応方法について、前もって話し、契約書に記載するのがおすすめです。

また、自社に物流のノウハウが蓄積されないデメリットもあります。
将来的に物流部門を自社で運用したい場合は、どこの部分を委託するか検討をしましょう。

まとめ

物流における保管は、単なる在庫の置き場ではなく、サプライチェーン全体の効率性やコストの大きさに関わるため重要です。
保管方法や管理体制、保管料の計算方法を正しく理解し、自社の物流特性に合った最適な手段を選択すれば、無駄なコストを削減しながらサービス品質を高められます。
近年では、保管効率を向上させるため、自動化設備やAIによる在庫最適化など、最新テクノロジーの導入が進んでいます。

これらは人手不足の解消や、作業精度向上に直結するだけでなく、需要の変動にも柔軟に対応できます。
また、物流業務をアウトソーシングすれば、専門業者のノウハウを活用できるだけでなく、物流コストの削減も可能です。
物流保管は単なるコストではなく、経営戦略の一部です。
長期的な視点で考え、自社に合った最適な保管方法を見つけていきましょう。