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見積もり前に知っておきたい!物流アウトソーシング費用の基本と相場

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EC市場の急速な拡大は、物流面での新たな課題を生み出しています。商品の保管スペース不足、煩雑な発送業務、人手不足、そしてセール時など急な物量増加への対応など、物流に関する悩みは尽きません。

特に商品開発やマーケティングなどコア業務に集中したいEC事業者にとって、物流業務の負担は事業成長の足かせとなりかねません。

そこで物流業務を専門業者に委託する「物流アウトソーシング」 が注目されています。しかし「導入したいけれど、費用がどれくらいかかるのか不安」「費用の内訳や相場がよくわからない」といった声も少なくありません。

本記事では、物流アウトソーシングの費用の内訳や相場感、コストに影響するポイント、そして「高くても依頼する価値があるのか?」という判断基準まで、わかりやすく解説します。物流アウトソーシングの費用構造を理解し、自社の状況に合わせて最適なパートナーを選定する参考になれば幸いです。

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物流アウトソーシングの費用内訳と相場感

物流アウトソーシングの費用は、主に「固定費」と「変動費」の2つの要素で構成されます。以下で示す相場感はあくまで目安であり、実際の費用は商材や物量、業務範囲、契約条件などによって大きく異なります。

固定費の具体的な内訳と相場

固定費としては主にシステム利用料や倉庫保管料、業務管理料が毎月発生します。それぞれ詳しく解説します。

システム利用料(WMS利用料など)
在庫管理や入出荷管理、ECカート連携などを行う倉庫管理システムの利用料です。月額数万円から数十万円程度が目安ですが、機能やカスタマイズ性によって変動します。ECカートシステムとの連携のしやすさも重要なポイントです。

倉庫保管料
商品を保管するスペースの利用料です。主な算出方法を3つご紹介します。
一つ目は「坪貸し」と呼ばれる算出方法です。エリアや倉庫の設備にもよりますが、1坪あたり月額数千円〜1万円越えとなる場合が多いようです。都市部や冷凍・冷蔵設備のある倉庫は高めになる傾向があります。

二つ目は「棚貸し」と呼ばれる算出方法です。1棚あたり月額数千円〜1万円程度になります。坪貸しよりも小さなスペースで契約できるため、比較的物量が少ない事業者や、多様な商品を少量ずつ保管したい場合に向いています。

三つ目は「個建て」と呼ばれる算出方法です。パレット単位、ケース単位、ピース単位など、自社の選択した単位で費用を算出できます。1パレットあたり月額数百円〜数千円、1ケースあたり数十円〜数百円、1ピース(商品1点)あたり数円〜数十円程です。ECのように少量多品種の商材を扱う事業者は、個建てを検討することが多いでしょう。使用したスペース分だけ費用が発生するため、コスト変動を抑えやすいのが特徴です。

業務管理料
物流業務全体の管理や事務作業、問い合わせ対応などに関する費用です。月額数万円〜数十万円程度が目安になります。委託業務の範囲やサポート体制の内容により、大きく変動します。

変動費の具体的な内訳と相場

変動費としては主に入庫料や検品料、ピッキング料や梱包料などが発生します。それぞれ詳しく解説します。

入庫料
商品が倉庫に到着した際の荷下ろし、棚入れ作業に関する費用です。1ケースあたり数十円〜数百円、1パレットあたり数百円〜数千円が相場です。 コンテナでの搬入には別途デバンニング料が発生することが多く、20ftコンテナで数万円~、40ftコンテナで数万円~十数万円程度です。手積みかパレット積みか、作業時間によっても変動します。

検品料
商品の品質や数量、品番などを確認する費用です。1点あたり数円~数十円程度の場合が多く、内容の複雑さで変動します。基本の入庫料に含まれる場合と、オプションとして別途発生する場合があります。特にアパレルなど、色やサイズ展開が多い商材は検品項目が増えるため費用が高くなる傾向があります。

ピッキング料
注文データに基づき、商品を揃える費用です。1オーダーあたり数十円~数百円、または1アイテムあたり数円~数十円で費用が発生することが多いです。

梱包料
商品梱包時に発生する作業費と資材費です。1梱包あたり数十円~数百円程度が目安で、段ボールや緩衝材など資材費の有無、商品のサイズや資材の種類、ギフト対応の有無で変動します。

発送料
梱包された商品を顧客へ配送するための費用で、物流コストの大部分を占めます。配送会社や荷物のサイズ、重量や配送エリア、冷凍・冷蔵の有無などによって大きく変動します。物流会社は大口契約を結んでいるため、EC事業者が個別に契約するよりも安価になることが多いでしょう。

このほかにも、棚卸し作業費や返品処理手数料、帳票発行費用や値札付けやアソート組みなどの流通加工費など様々な変動費が発生する可能性があります。

EC物流アウトソーシングで発生しやすい追加費用と対策

EC物流はBtoBの物流とは異なる点があり、予期せぬ追加費用が発生することがあります。どのような場合に費用が追加されるのでしょうか。代表的な例と対策をご紹介します。

セール時や季節イベントによる出荷量の急増

大規模セール時には注文が急増し、臨時スタッフの用意など特別な対応が必要となります。波動対応手数料や時間外作業費が発生することが多いです。
対策として、事前にセール予測を物流会社と共有しましょう。波動対応の料金体系や対応可能な物量上限を確認しておくことが重要です。

ギフト対応などの特殊梱包

ギフトラッピングやのし対応、メッセージカード同梱などは、通常梱包よりも手間がかかります。1件あたり数十円~数百円の追加作業費が発生することが多いです。
対策として、対応可能な作業範囲と料金を事前に確認しましょう。見積もりに含めてもらい、事前に必要な料金を把握することをおすすめめします。

特別な管理が必要な商材の取り扱い

食品や化粧品など、賞味期限やロット管理が必要な商材の取り扱いには、特別な管理費用が上乗せされることがあります。
対策として、賞味期限やロット管理が可能か、運用実績があるかを確認しましょう。管理ルールを明確にし、物流会社と共有しましょう。

温度管理が必要な商品の保管・配送

冷蔵・冷凍など指定された温度管理下での保管や配送が必要な場合、保管料や配送料の追加費用が発生します。
対策として、物流会社の実績や設備、料金体系を詳細に確認しましょう。自社の商材に最適な対応ができる会社を選定します。

返品処理や再商品化の作業費

EC事業では一定数の返品が発生し、検品や再在庫化などの作業が発生します。1件あたり数百円~数千円の返品処理手数料がかかる場合があります。
対策として、返品ポリシーを明確にし、返品処理のフローと料金体系を事前に確認しましょう。

システム連携の初期設定費用や追加カスタマイズ費用

自社のECカートシステムと物流会社のWMSを連携させる際など、初期設定費用やカスタマイズ費用が発生することがあります。
対策として、自社が利用中のシステムとの連携実績があるか、費用が明確に見積もられているかを確認しましょう。

イレギュラー作業費

バーコード未貼付や商品マスタの不備など、商品情報に不備があると物流会社で追加作業が発生し、追加費用を請求されることがあります。
対策として、商品登録ルールを整備します。自社で正確な商品マスタを作成し、物流会社に提供しましょう。

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物流アウトソーシング費用の見積もりで失敗を防ぐ方法

自社に適した物流アウトソーシング業者を選ぶためには、正確な見積もりと複数社の比較検討が必要です。適正な費用で契約するためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。確認すべき3つのポイントをお伝えします。

1.自社の情報を見積もり依頼前に準備する

正確な見積もりを得るためには、自社の情報を詳しく伝える必要があります。取り扱う商材の詳細(サイズや重量、温度管理の要否など)や、物流データ(月間平均出荷件数、1オーダーあたりの平均商品点数、在庫点数、返品率など)は不可欠です。

また、現在利用中のECカートシステムや受注管理システムのタイプ、希望する連携方法も伝えます。可能であれば、現在の物流コスト内訳や抱えている物流課題、希望する業務範囲も具体的に共有しましょう。

2.複数社から相見積もりを取得し比較する

少なくとも3社程度から見積もりを取得すると、自社に合った業者を見つけやすくなります。各社の料金水準やサービス内容、得意分野を比較できます。

見積もりを比較する際は、必ず見積もり条件を揃えて依頼しましょう。単純な総額だけでなく、各作業の単価や算出根拠(例: ピッキング料が「1オーダーあたり」か「1アイテムあたり」か)を細かく確認しましょう。

3.「安さ」だけで選ばず総合的に判断する

見積書は隅々まで目を通しましょう。「一式」や「その他作業費」といった曖昧な項目や不明点があれば、詳細な内訳を求めます。最低利用料金(ミニマムチャージ)、初期費用、最低契約期間や解約条件、違約金の有無、そして料金改定の条件も必ず確認しましょう。

目先の費用が安いという理由だけで業者を選ぶと、後々後悔する可能性があります。誤出荷や配送遅延、梱包の不備は顧客満足度を大きく損ないます。リピート購入機会を失う原因にもなるでしょう。費用を抑えることは重要ですが、サービス品質やサポート体制、担当者の対応力なども含め、総合的な費用対効果で判断することが大切です。

物流アウトソーシング費用を抑える5つのコツ

物流アウトソーシングを依頼した後も、常に物流コスト最適化を意識しましょう。工夫次第で、さらにコストを抑えることもできます。費用を見直す代表的な例を5つご紹介します。

1.委託業務範囲の見直し

全ての業務を丸投げせず、自社で対応できる業務とアウトソーシングすべき業務を見極めましょう。本当に必要なサービスだけを依頼することで、無駄な費用を抑えられます。

2.在庫管理の精度向上

正確に需要を予測し、過剰在庫や滞留在庫を減らしましょう。不良在庫や売れ残りが多いと、その分保管料が無駄になります。定期的な棚卸しやデータ分析に基づいた発注計画が、保管料の削減に繋がります。

3.梱包資材の見直し

商品サイズに合わせた適切な資材を選び、可能であれば資材の種類を整理しましょう。過剰な梱包はコスト増に繋がります。また、環境に配慮したエコ資材への切り替えや、複数の商品をまとめて送る際の同梱方法の工夫も、資材コスト削減や作業効率向上に有効です。

4.物流会社との密な連携

セール情報や新商品発売予定など、自社の年間販売計画を事前に共有しましょう。物流会社は効率的な人員配置が可能になり、波動対応費用などを抑えられる可能性があります。密なコミュニケーションは、トラブルの未然防止にも繋がります。

5.物量や契約期間による交渉

安定した物量が見込める場合や長期契約を前提とする場合、単価交渉が有利に進む可能性があります。物流会社は継続的な取引を重視する傾向があるため、実績を積んだ後に再交渉を打診するのも一つの手です。ただし、無理な交渉は避け、現実的な数字を提案しましょう。

費用だけでは測れない!信頼できる物流アウトソーシング業者を選ぶポイント

費用は重要な選定基準の一つですが、それだけで決めてしまうと後悔する可能性があります。以下のポイントも含めて比較検討し、長期的な視点で最適なパートナーとなる業者を選びましょう。

1.自社の商材への対応実績

自社の商材(アパレル、食品、化粧品、雑貨など)の取り扱い経験が豊富な業者であれば、商材の特性を理解した適切な管理や作業が期待できます。温度管理が必要な食品、デリケートな扱いが求められるアパレルなどは、特に専門性が重要になります。

2.自社のECシステムとの連携実績

自社が利用しているECカートシステム(Shopify、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど)や受注管理システム、基幹システムとの連携が可能か確認しましょう。API連携やCSV連携など、どのような方法で連携するかもあわせて確認します。連携実績が豊富な業者は安心です。

3.倉庫の立地と管理体制

倉庫の立地は、配送リードタイムや輸送コストに影響します。特に届けたい顧客層が多いエリアに倉庫があるか、災害時のリスクはどうかなども考慮しましょう。また、管理体制も重要な確認ポイントです。監視カメラや入退室管理などのセキュリティ体制、清掃状況、災害時の事業継続計画なども確認しましょう。

4.物流品質の高さ

誤出荷率や破損率など、具体的な物流品質の指標を確認しましょう。これらの情報は、依頼すれば開示してくれる物流会社もあります。万が一トラブルが発生した場合の対応の流れや、継続的な品質改善への取り組みがあるかも重要です。顧客満足度を大きく左右する要素です。

5.柔軟な対応力

事業の成長に伴う出荷量の増加、海外発送などの新たな要望に対応できる体制があるか確認しましょう。拡張性や将来的なサービス追加への柔軟性は、長期的に契約を継続できるか判断する参考になります。

6.サポート体制

定期的なレポート提出や改善提案など、積極的なサポート体制があるか確認しましょう。日々のやり取りがスムーズに行えるか、専任の担当者がつくか、問い合わせへの返事は早いかなど、コミュニケーションの質も確認したいポイントです。

7.契約内容の透明性

見積もり内容や契約書に曖昧な点がないか、責任範囲や免責事項が明確に記載されているかを確認します。商品の破損や紛失など、万が一の事故に対する保険加入状況なども確認しておくと安心です。

物流アウトソーシングの費用を理解し、最適なパートナー選びをしよう!

EC事業において、物流は単なるコストではありません。顧客満足度を高め、リピート率を向上させる重要な業務です。

物流アウトソーシングの費用は固定費と変動費から成り立ち、その内訳や相場感は委託業務範囲や物量、商材特性によって大きく異なります。費用を検討する際には目先の金額だけでなく、サービス品質や自社の状況、そして将来的な拡張性まで含めた総合的な費用対効果を見極めることが大切です。

本記事が、EC事業者様にとって最適な物流アウトソーシング選びの一助となれば幸いです。まずは複数の物流会社に問い合わせ、自社の状況や要望を伝えて相談してみましょう。

参考記事:
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