倉庫での化粧品の取り扱いには許可が必要?化粧品保管の注意点もご紹介

近年、倉庫業務のアウトソーシングが増加し、他社の化粧品を自社倉庫で管理したり、自社化粧品を他社倉庫に預けたりするケースが増えています。その際、倉庫で化粧品を管理するために、特別な許可が必要なのかどうか疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、倉庫で化粧品を扱うためには「化粧品製造業許可」という許可が必要となります。この記事では、化粧品製造業許可の詳細や取得条件などについて、詳しく解説していきます。また、物流倉庫で化粧品を保管する際の注意点についても説明します。
新しく自社倉庫で化粧品を扱う予定、または自社化粧品管理を外部倉庫に委託する予定の人は、ぜひ参考にしてください。
倉庫での化粧品の取り扱い時には許可が必要なのか

倉庫で化粧品を取り扱うためには、「化粧品製造業許可」が必要です。
名称だけを見ると、「化粧品を “製造” する業者のための許可」となっていて、保管するだけの倉庫には関係が無いように思えます。しかし、品質を保つために化粧品を適切に保管し、正しい包装や表示を行うことも、広い意味では「製造」に含まれます。そのため、直接の製造作業を行わない倉庫であっても、化粧品製造業許可を取っている必要があります。

化粧品製造業許可とは?
「化粧品製造業許可」とは、医薬品や化粧品の適正品質や安全性を示す「医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という法律によって定められた許可です。この法律は正式名称が長いため、通称「薬機法」として知られています。
薬機法では、実際に化粧品を作り出すことだけでなく、「容器にラベルを貼る」「化粧品を外箱に梱包する」といった作業も「製造」の範疇に含まれています。そのため、倉庫でこれらの作業を行う場合は、実際の製造業務に関与していなかったとしても、化粧品製造業許可を取得していなければなりません。もし、化粧品製造業許可を持っていない倉庫で化粧品を取り扱うと、法的に罰せられてしまいます。
また、外部倉庫に委託する際は、委託先の倉庫だけでなく、依頼した企業も一緒に罰せられてしまうため、特に注意が必要です。
化粧品製造販売業許可とは何が違う?
化粧品製造業許可に似た許可に「化粧品製造販売業許可」というものがあります。こちらは化粧品の「販売」を許可するものなので、倉庫で保管をするだけであれば必要ありません。
ただし、倉庫での保管と合わせて販売も行う場合は、これら両方の許可を取得していなければなりません。
・化粧品製造業許可⇒化粧品の製造(梱包・表示・保管を含む)を行うための許可
・化粧品製造販売業許可⇒化粧品の販売を行うための許可

何をもって「化粧品」と呼ぶのか?
ここまでを読んで、一体何が化粧品で、何がそうでないのか疑問に思った人も多いのではないでしょうか。
薬機法では、化粧品の定義を以下のように定めています。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
引用:医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第2条第3項|e-GOV法令検索
この定義で特に注目すべきなのは、「人の身体を清潔にし」「皮膚若しくは毛髪を健やかに保つ」といった文言です。
つまり、いわゆる口紅やファンデーション、化粧水などの一般的な化粧品に限らず、シャンプーや石鹸、歯磨き粉などの製品も、法的には「化粧品」と定義されていることになります。そのため、これらの製品を扱う倉庫においても、化粧品製造業許可を取得しておく必要があります。
化粧品製造業許可を取得するために必要な要件
化粧品製造業許可を取得するための要件は、薬機法の第13条で定められています。
実際の条文は法令特有のわかりにくい言い回しになっていますが、簡潔にまとめると、「人」と「設備」の2つの要件を満たしておくことが求められています。以下でそれぞれ詳しく確認していきましょう。
化粧品製造業許可のための人的要件
化粧品製造業許可を取得するためには、「製造責任技術者」を製造所ごとに配置しなければなりません。
製造責任技術者とは、化粧品の製造工程を管理し、品質や安全性などを確保するための存在です。製造責任技術者になるためには、薬剤師であることや、専門課程終了程度の学歴を保持していることなど、一定の資格が必要とされます。

化粧品製造業許可のための設備要件
化粧品製造業許可を取得するためには、対象の倉庫が「薬局等構造設備規則第13条」に定められた設備要件を満たしていなければなりません。同規則にはさまざまな内容が記載されていますが、特に重要なのは以下の5点です。
1.照明と換気が適切で、清潔であること
2.居住場所や不潔な場所から明確に区分されていること
3.作業を行うのに十分な面積が確保されていること
4.防じん、防虫のための構造や設備があること
5.廃水や廃棄物を処理するための設備や器具を備えていること
倉庫で化粧品を保管する際の注意点とは?
ここまで見てきたように倉庫で化粧品を扱うためには、化粧品製造業許可を取得している必要があります。しかし、許可さえ取れば良いわけではありません。
化粧品は非常にデリケートな製品なので倉庫にて適切に保管するためには、いくつかの注意点があります。
ここでは化粧品を倉庫で管理する際や、アウトソーシングする企業を選択する際の代表的な注意点を4つ確認していきましょう。

注意点①:適切な温度と湿度の管理
化粧品の品質を保つためには、24時間365日体制にて適切な温度と湿度にした環境下で管理することが必要です。高温や低温の状態が長く続いたり、激しい温度・湿度の変化があったりすると、未開封の製品でも品質が低下してしまう可能性があります。
仮に品質上問題がない場合にでも、エンドユーザーが箱を開けた瞬間に見た目が変色していればブランドイメージの低下に繋がる可能性もありますし、リピート購入は期待できないでしょう。
特に、夏の暑い時期は温度・湿度ともに高くなりやすいので注意が必要です。化粧品を保管する際は、倉庫内の温度・湿度を一定に保てるよう、しっかり空調設備を整えるようにしましょう。
また、倉庫内での温度・湿度管理を徹底したところで、運送の過程で常温に放置してしまっては意味がありません。「適切な環境下」という意味では、倉庫管理と運送の両面において、温度・湿度を整えることが大切です。
冷蔵保存している商品の場合、厳重に温度管理された倉庫からピッキングされた後も引き続きデジタル管理によるモニタリングを徹底し、いかに温度・湿度の環境を変えずに運送会社に引き渡すかが重要な課題となります。運送会社とのデータ共有やシステムの連携なども有効な選択肢と言えるでしょう。
注意点②:製造日や消費期限に応じたロット管理
化粧品は、製造から時間が経つと品質が低下してしまうため、容器や包装に製造番号や製造記号を記載するように薬機法で定められています。これらの番号や記号は、化粧品の製造日・消費期限を判断するための重要な指標です。
そのため、倉庫で化粧品を適正に扱うためには、製造番号や記号に応じたロット管理を行い、先入れ先出しを徹底することが重要となります。
ただし、人の手で作業する限り、完璧なロット管理や先入れ先出しは不可能です。アナログ管理で行う限り、必ずどこかでヒューマンエラーが発生してしまいます。
また、人の目で視認しやすくするためには、ロケーションを複数用意し、ある程度広い保管スペースが必要です。その結果、化粧品があることで、倉庫全体の保管スペースが圧迫されてしまう可能性があります。
化粧品のロット管理・先入れ先出しを効率的に行うためには、倉庫管理システム(WMS)の導入が不可欠です。システム管理すれば、ヒューマンエラーによる誤ピックを防止でき、機械管理のため、保管スペースも大幅に縮小することができます。
三協では、自社で独自に開発したWMSである「SANTA」を活用することで、ミス無く省スペースに化粧品を管理できるようになります。化粧品のロット管理でお悩みの場合は、ぜひご相談ください。
注意点③化粧品に精通したシステムエンジニア
化粧品におけるロット管理や消費期限管理の基準は、企業の業態やコスメブランドの販売方針によって大きく左右されます。
「同じ出荷先ではロット番号を跨がないように制御したいが、欠品が出た場合やロットの逆転が許されない出荷先では柔軟に扱えるようにしたい」
「原則として、残存期限が24ヶ月以上の商品を出荷する。しかし販売チャネルや特定の卸先、取り扱う商材によっては、この基準をシステム画面上でパラメータを設定し、柔軟に変更できるようにしたい」
こうしたきめ細かいカスタマイズを実現するには、化粧品の商流や倉庫現場に精通しているシステムエンジニアが不可欠です。
・取引先ごとのマスタ設計(例:ロット跨ぎの可否や残存期限基準を設定)
・欠品発生時の優先引当ルール(例:部分出荷を許可するか、アラートで止めるかを設定)
・返品時の入庫ルール(例:既存ロケに戻すか、返品専用ロケに一時入庫するかを設定)
・残存期限やロット変更時の承認フロー(例:責任者の承認を必須にするか、即時反映にするかを設定)
こうした複雑な条件は、化粧品倉庫の実務に精通したエンジニアだけが、現場に即したロジックとしてシステムに落とし込めるのです。
当社には、化粧品倉庫でじっくり経験を積んだシステムエンジニアが在籍しています。
お客様と直接対話を重ね、その企業にとって最適な化粧品倉庫をハードとソフトの両面から構築できる――これが私たちの強みです。
注意点④化粧品の取り扱い実績
化粧品倉庫のアウトソーシング先を選定する場合、「化粧品の取り扱い実績が豊富かどうか」は欠かせない基準です。
化粧品はアイテム数が非常に多く、さらにカラーバリエーションも豊富なため、倉庫内のロケーション管理はどうしても複雑になります。また、ロット番号や消費期限の管理に加え、他の商材以上に先入先出(FIFO)への対応が求められる場面も多いため、より精緻なロケーション設計と運用が不可欠です。
さらに、コスメアイテムはトレンドの移り変わりが早く、SNSキャンペーンやインフルエンサー施策で需要が大きく変動します。そのため、在庫の動きを即座にシステムに反映できる仕組みや、販売チャネル(ECモール、サロン、百貨店などのポップアップストア、展示会出展など)ごとに異なる倉庫オペレーションが求められます。
その他にも、海外輸出入では 通関手続きや国際輸送業者との連携 が欠かせません。
たとえば FedExやDHLといった国際宅配便(クーリエ)を利用する場合、インボイス(商業送り状)の発行や関税処理、通関手続き、さらには香水などアルコールを含む商品の危険品判定まで、正確に対応できる体制が必要です。
また化粧品は、国ごとに規制が厳格で、日本の薬機法、EU化粧品規則(CPNP)、米国のFDA(MoCRA)、中国のNMPA制度など、それぞれ異なる基準があります。さらに制度改正も頻繁なため、各国の最新ルールを把握しながら運用することが不可欠です。
三協は化粧品だけを取り扱う「コスメ専用の物流倉庫」を関西エリアに保有しており、スキンケア・メイクアップ・ヘアケア・フレグランスなど幅広いコスメ商材を保管しています。
当社はカスタマイズ対応を徹底しているからこそ、他社では難しいような細やかなご要望まで数多く寄せられています。
「今度仕入れるフレグランス製品は、瓶・スプレーヘッド・キャップの3つが別々に入荷してくる。付属品にはJANコードがなくシステムで判別できないため、出荷時に正しく組み合わせられるよう、ロケーション管理と作業フローを構築してほしい。」
「欧州から輸入するスキンケア商品については、日本の薬機法に適合しているかを事前にチェックし、さらに DHLやUPS、FedEx/TNT など欧州域内で強みを持つクーリエやフォワーダーを組み合わせて、最適な輸送ルートを選べるフローにしてほしい。」
といった日々の要望に一つひとつ対応することで、当社の化粧品倉庫は常に進化を続けています。
加えて当社では、コスメ企業様向けに倉庫見学会や個別相談会を開催しており、2018年から2025年の7年弱で、累計184社の化粧品企業にご参加いただきました。すべての業種を含めると1,000社を超える企業が参加しており、その中で共有された膨大な物流課題やニーズは、当社が提供する化粧品倉庫の品質や生産性を高める大きな起爆剤となっています。
以下は、ある日の倉庫見学会に来られた化粧品問屋様の課題です。
倉庫見学会に来られた化粧品問屋様
当社は500社を超える全国のサロン向けに商品を卸しており、当日16時までの注文はすべて当日出荷しています。大手サロンでは1日に複数回注文が入ることも珍しくありません。アマゾンのように注文ごとにそのまま出荷できれば楽ですが、配送コストを抑えるためにはできるだけ個口数を抑えて同梱出荷する必要があります。
しかし、同じ取引先から追加注文が入った際に、それをシステムで自動判定できないため、同梱処理が漏れて複数個口で出荷してしまい、無駄な配送コストを払うリスクが高まります。さらに、同梱処理の必要性に気付けたとしても、最初の注文を詰めた段ボールが倉庫内のどこにあるかが分からず、探す手間が発生していました。
その結果、現場では「午前中にも注文があったはず」という社員の記憶に頼る属人的な作業となり、業務の継続性という意味でも大きな問題となっていました。
当該案件は成約とはなりませんでしたが、既存の化粧品企業へも有用であると判断し、以下のように仕組み化することになりました。
三協が構築した仕組み
検品画面において、当日中に同一サロンから先行する注文がある場合には自動で「同梱分」というフラグを立てる仕組みを構築しました。これにより、作業者は同梱専用スペースから対象商品を探すことができ、「午前中に注文があったはず」といった人の記憶に頼る属人的な判断を完全に排除できます。
この処理のポイントは、最初の注文と後からの注文の検品順序が前後したとしても影響を受けないよう、頑健に設計されている点です。順番に左右されず正しくフラグが立つことで、どんな状況でも安定した同梱判定が可能になりました。
さらに、このフローには同梱商品のロケーション管理も組み込み、対象の段ボールが倉庫内のどこにあるかを精緻に見える化しました。これにより、探す手間を大幅に削減するとともに、その日に入社したパートスタッフでも作業できます。
このように、「既存のコスメ顧客に有用である」と判断すれば、取引に至らなかった企業の課題であっても、倉庫見学会や相談会で共有された声を既存機能の改修や新機能として積極的に取り入れています。
既存顧客のリアルな課題×見学会で得られる潜在ニーズの両面を吸収し続けることで、他社では提供できないレベルまで化粧品倉庫の品質を高め、進化させているのです。
【まとめ】倉庫での化粧品取り扱いには「化粧品製造業許可」が必須

今回は、倉庫で化粧品を取り扱う際に必要となる「化粧品製造業許可」の詳細と、取得するための要件について、法令を参照しながら詳しく確認してきました。
化粧品を作るだけでなく、梱包や表示の貼り換えなどの作業も、法的には「製造」に区分されます。そのため、化粧品を倉庫で保管する際は、「化粧品製造業許可」を取得していないと、無許可営業扱いで罰せられてしまうので注意が必要です。
今回ご紹介したことを参考に、正しく安全に化粧品を取り扱っていきましょう。
株式会社三協では化粧品・医薬部外品製造業許可証など様々な許可証を保持しており、薬機法に則った化粧品物流をご提供しています。化粧品の取り扱いや物流にお悩みの際は是非ご相談ください。