「そこそこの物流品質」は存在しない──ピタゴラスイッチが教えてくれること
こんにちは。
株式会社三協の山田です。
「月に1度くらいの誤出荷は、そこまで気にしなくてもいいのでは?」
そんなご相談をいただくことがあります。
たしかに、「毎日ミスが出るのは困るけど、たまに出るくらいなら仕方ない」と考えるのは、現場を持つ企業にとって現実的な感覚かもしれません。
“そこそこの物流品質”という言葉も、ほどよく聞こえることがあります。
ですが、私はあえてこうお伝えしたいのです。
「そこそこの物流品質」は、実は存在しないと
そこそこの物流品質は存在しない
いやいやいや・・・
「そこそこの物流品質はそりゃ存在するだろう」と思われますよね。
順を追って説明させていただきますね。
誤出荷は、単なる偶発的なミスではなく、さまざまな要因が複雑に絡んで発生します。
(1)商品が所定の棚に置かれておらず、毎回探しながらピッキングしている
(2)営業がシステムを通さず、手渡しでサンプルを持ち出す
(3)特定の得意先に対して、取り置きやイレギュラーな出荷対応が頻発
(4)一部の商品にバーコードがなく、外装や見た目で識別している
(5)セット商品の組み合わせパターンが多く、内容を覚えていないと間違う
(6)出荷日や運送便が直前に変更されることが多い
(7)郵送コストの削減で、同日内の複数注文を出荷直前まで調整
こうしたアナログ的な要素やイレギュラー対応が重なれば、人的ミスはいつでも起こり得ます。
ですが、このようなイレギュラー対応は柔軟な販売活動には不可欠です。
もし経営層が「月に1回くらいなら誤出荷も仕方ない」と判断すれば、
その空気は確実に現場に伝わります。
「100%じゃなくてもいい」
「99.9%でも十分だろう」
そうした“ほんのわずかな許容”が積み重なることによって、
「これって間違いが起きるかもしれない」という小さな違和感や気づきが、
現場で共有されなくなっていきます。
結果として、ミスの芽を摘む力そのものが弱まってしまうのです。
突然ですが、、
NHKの番組『ピタゴラスイッチ』に登場する“ピタゴラ装置”を思い浮かべてみてください。
ボールが転がり、ドミノが倒れ、輪ゴムが弾かれ……といった一連の動作が正確に連動して、はじめて最後まで成功するあの仕組みです。
たとえば1工程の成功率が99.9%だったとしても、
20工程あれば、全体の成功率は約98%まで低下します。
もし成功率が99.8%だった場合には、成功率は96%にまで落ちます。
物流の現場も、これによく似ています。
一つでも工程が乱れれば、正しい出荷は成立しません。
つまり、「まあこれくらいなら大丈夫」という判断が重なると、
誤出荷率はどんどん増加していくのです。
2009年、民主党政権下の「事業仕分け」で、以下のような発言がありました。
「世界一になる必要があるんですか? 2位じゃダメなんですか?」
これは、世界最速のスーパーコンピュータ(のちの「京」)
の開発プロジェクトに対する発言でした。
この言葉は広く報道されたので記憶されている方も多いのではないでしょうか
たしかに、2位でも使えるのかもしれません。
コスト効率を考えれば、1位を目指す必要が見えにくくなる場面もあるでしょう。
しかし、現場から上がった声はこうでした。
「1位を本気で目指すからこそ、妥協を許さず、技術も精度も磨かれる」
つまり、「2位」は、本気で1位を目指したからこそ到達できる結果であって、
最初から「2位でいい」と考えていては、決してたどり着けるものではありません。
物流の現場もまさに同じです。
最初から「多少の誤出荷は仕方がない」と考えてしまえば、
現場で「これってミスにつながるかもしれない」という小さな違和感にも、
誰も反応しなくなってしまいます。
現場全体がアンテナを張り巡らせ、
ほころびが“ミス”に発展する前に、ほころびの段階でふさぐ文化が必要です。
「誤出荷ゼロ」を目指すというのは、
仕組みやシステムだけでは絶対に達成できません。
「小さな兆しに気づき、声を上げ、未然に防ぐ」
そうした感度と緊張感を現場全体で共有し続ける文化があってこそ、
実現できる目標なのです。
“そこそこの物流品質”というのは、一見うまくいっているように見えるかもしれません。
ですが実際には、品質というのはじっと止まっていてくれるものではなく、
「良い方向に育っていくか」or「少しずつ崩れていくか」
そのどちらかしかありません。
日々の積み重ねの中で、
現場に“文化”が根づけば自然と品質は上がっていきます。
逆に、見過ごしや油断が続けば、品質は下がっていきます。
だから結局のところ、
「そこそこの物流品質であり続けること」はできないのです。
「しっかりとした物流現場を作り、競争力を高めたい」
とお考えの方は、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
また、当社では定期的に倉庫見学会を開催しております。
実際の現場をご覧いただくことで、数値では見えない“品質の背景”をご体感いただけるはずです。
ご興味のある方は、ぜひご参加ください。