トヨタのジャストインタイムは幻?

こんにちは。
株式会社三協の山田です。

本日も無事に全ての出荷を終えることができました。
土曜日・日曜日・祝日なども配送可能な物流センターにはまだ空きがございます。長期のお休み中の出荷で悩んでいるお客様はお気軽にご相談ください。

今回のメルマガは「トヨタのジャストインタイム」についてお話します。

トヨタのジャストインタイムは幻?

トヨタの「かんばん方式」や「ジャストインタイム(JIT)」は、製造業の教科書として世界中の企業に影響を与えてきました。

ジャストインタイム(JIT)とは、「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ」供給するという考え方です。

もともとは生産現場の効率化手法として広まりましたが、
この思想は物流においても非常に重要な意味を持ちます。

物流でJIT(ジャストインタイム)が実現すれば、
以下のような柔軟なマーケティング施策が可能になります。
(1)新商品のスピーディーな市場投入
(2)パターン違いの同梱物を自在に封入
(3)楽天やYahoo!などの優良配送
(4)細かいロット指定や賞味期限管理
(5)ECと実店舗の在庫をリアルタイムで一元管理 など

このジャストインタイムの生みの親として知られているのが自動車メーカーのトヨタであると言われています。
トヨタが日本を代表する優れた企業であることに異論の余地はありません。
EVシフトが加速する中でもハイブリッド車の可能性を追求し続け、着実に利益を上げてきたその経営判断は、世界的にも高く評価されています。

私もずっとトヨタ車に乗ってますのでトヨタの車は大好きです!
ただし、そのトヨタが「ジャストインタイムの完成形」として語られることには、現場の実感としては大きなギャップがあります。

今日は一般的には語られていない、
「トヨタは本当にジャストインタイムを実現しているのか?」
というところについてお話させていただきます。

まず理解すべきは、
「トヨタのジャストインタイム」を実際に支えているのは、
トヨタ本体ではなく、そのサプライチェーンを構成する数多くの部品メーカー
であるということです。

トヨタに対して「必要な部品を、必要なときに、必要なだけ」納品するために、これらのメーカーは工場近隣に倉庫を構え、即納体制を構築しています。
トヨタが「その1個が今ほしい」と言えば、
即座に届ける体制が整っていなければなりません。

それが、系列メーカーに課されている“当たり前”であり、
トヨタのジャストインタイムを支える現実なのです。
トヨタに対して、
「必要な部品を、必要なときに、必要なだけ」納品するということは、
「必要でないものを、必要でないときに、必要でないだけ在庫として用意する」 という対応を常にしておくことを意味するのです。

これは、ジャストインタイムの理想とは真逆の、
ある種の“逆説”を内包した運用と言えるでしょう。
このように考えると、トヨタのジャストインタイムが成立しているのは、
実のところ部品メーカー側がその負担をすべて引き受けているからこそであり、トヨタが単独で実現しているわけではありません。

さらに、「トヨタは本当にジャストインタイムを実現できているのか?」
という疑問も残ります。
たとえば私たちが「トヨタ車を買いたい」と思ってディーラーを訪れても、
即納できるケースはほとんどありません。

人気車種では2〜3年待ちということもあり、通常でも数ヶ月から1年以上かかることは珍しくありません。
トヨタは自分たちが車を作るときに、必要な部品が必要なタイミングで必要なだけ手に入りますが、、
私たちはトヨタ車を買いたいなあと思うタイミングでトヨタ車を買うことは決して出来ないんですよね。

私自身、何がジャストインタイムなんだろうと日々思いながらトヨタで車を購入しています(笑)結局買うんですけどね。。
もちろん、こうした供給体制が成立している背景には、トヨタの製品力とブランド力、そして系列企業との強固な信頼関係があります。
トヨタが要求すれば部品メーカーが応じるのも、それだけの影響力と安定供給の実績があるからです。他のメーカーが同じように振る舞っても、軽くあしらわれてしまうのがオチでしょう。

こうした点を踏まえれば、

「トヨタ方式を導入すれば、自社でもジャストインタイムが実現できる」と考えるのは、極めて表層的な発想です。 結局のところ、トヨタのジャストインタイムとは、巨大な企業規模と系列ネットワークを前提にした、非常に特殊な構造の上に成り立っているものです。
そして、その実現を支えているのは、トヨタ本体ではなく、無数の部品メーカーと、彼らの不断の努力なのです。
「トヨタを参考にできないなら、そしたら結局のところ、
物流でJIT(ジャストインタイム)を実現するにはどうしたらええねん!」
ということになりますよね。

結論から言うと、物流現場でジャストインタイム(JIT)を実現するために最も重要なのは、情報のジャストインタイムです。
必要な情報が、必要なときに、正確に、漏れなく届くこと。
それが現場の準備と判断を可能にし、JIT物流の基盤となります。

物流における情報は、
「確定情報(具体的な入出荷の情報)」と
「予測情報(割引セール情報、展示会への出展情報など)」
の2種類に分類できます。
これらの情報は、WMS(倉庫管理システム)に取り込むことで、
入出荷に必要な準備作業を事前に着手できます。
先日、当社のお客様でダイソー向けに商品を提供されている企業様が、
なんと通常の15倍もの注文を受けるという嬉しい悲鳴がありました。

これほどの急増――
普通なら、現場がパニックになってもおかしくありません。

しかし「情報のジャストインタイム体制」を構築していたことで、
事前に予測と人員・動線・WMSの設定まで準備済み。
結果として、出荷遅延ゼロで全量を出し切ることに成功しました。

ビジネスチャンスを逃すか、掴み取れるか。
その分かれ道は、ほんの少しの「情報の扱い方」にあるのです。
この「情報をどう扱い、どうWMSに組み込むのか」は非常に奥が深く、
メルマガでは語りきれません。
だからこそ、実際の現場をご覧いただくことで、初めて見えてくるものがあります。ぜひとも当社の倉庫見学会(無料)にお越しください。

倉庫見学会では…
・予測情報に基づいたピッキング計画の組み立て方
・WMSへの情報連携の考え方
・統計的予測を活かしたSKUごとのロケーション管理

といった内容を、現場のリアルな運用とともにご紹介しています。
「トヨタ方式を真似ても、うちでは無理だった」
そう感じている企業様にこそ、見ていただきたい内容です。
JITの“理論”ではなく、“現場の工夫”**にご興味ある方は、ぜひ一度お越しください。続きは、現場で。お会いできるのを楽しみにしております。

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記事の作成者

代表取締役

山田

現場一筋40年。従来の物流倉庫のスタイルを一掃し、社内にシステム開発室、デザイン室を開設。総合物流の効率化を図ると共に、ネットショップ物流に特化したSANKYO-ECを立ち上げる。 近年では自社倉庫だけで無く、倉庫をお持ちの企業様の物流改善まで手がけ、数ある物流倉庫の「誤出荷ゼロ」「在庫差異ゼロ」「入出庫遅延ゼロ」を実現。 著書に「誤出荷ゼロ!自社倉庫管理術」「EC物流改善メソッド」(幻冬舎)がある。